新学期やクラス替えの直後に起こりやすい人間関係の変化など、学級の雰囲気を温めたい時期に、どのような活動を取り入れるべきか悩むことも多いですよね。
特に、構成的グループエンカウンターという言葉を見聞きして、中学校の学級活動やホームルームでアイスブレイクとして活用できるゲームを探している方は少なくないと思います。
学級集団づくりを進める上で、生徒同士の自己理解や他者理解を深めることはとても大切です。
しかし、ただ盛り上がるだけの活動ではなく、シェアリングによる振り返りの手順や、参加の自由を保障し非審判のルールを守るといった、いじめ未然防止にもつながる安全な場づくりが求められます。
この記事では、新学期の浅い自己開示に最適なペアワークから、短時間でできるウォーミングアップ、そしてうまく盛り上がらない時のファシリテーションのコツまで、中学校のグループエンカウンターに関するゲームの実践方法を分かりやすく解説していきます。
私自身も学級の様子を見ながら試行錯誤してきた一人ですので、少しでも皆さんのクラスづくりのヒントになれば嬉しいです。
- 構成的グループエンカウンターの基本的なねらいと効果
- 安全な場を作るためのルールの設定と振り返りの方法
- 学級の段階に合わせた具体的なゲームやペアワークの例
- 活動がうまくいかない時の対処法やファシリテーションのコツ
中学校のグループエンカウンター向けゲーム
ここでは、グループエンカウンターの基本的な考え方や、中学校の教室でゲームを実施する際のねらい、そして活動を安全で意味のあるものにするためのルール作りについて詳しく見ていきましょう。
構成的グループエンカウンターとは

構成的グループエンカウンター(SGE)とは、あらかじめ設定されたねらいに沿って、体験的な課題(エクササイズやゲーム)を行い、その後に参加者同士で感情や気づきを分かち合う(シェアリング)グループアプローチの手法です。
単なるレクリエーションとは違い、この体験と振り返りのセットが大きな特徴ですね。
学校教育の現場では、生徒が安心できる居場所を作り、人間関係のスキルを育むための手段として注目されています。
「エンカウンター」とは「ほんものとの出会い」を意味し、自分自身の本音や、他者の飾らない姿に出会うことを目的としています。
私自身、最初は「ただ楽しく遊べば仲良くなれるのでは?」と思っていましたが、しっかりと意図を持って枠組みを作ることで、生徒たちの気づきの質が全く変わることに驚かされました。
元々グループエンカウンターには、合宿などで数日間かけて深い自己探求を行う「非構成的」なものもありますが、学校という環境ではそれは負担が大きすぎます。
そこで、短い時間で特定のテーマ(例えば「協力」や「他者理解」など)に絞って行う「構成的」なアプローチが、中学校の教室にはぴったりなんですね。
ゲームやレクリエーションとの決定的な違いは、活動そのものが目的ではなく、活動を通して得られた「気づき」を言語化するプロセスが必ずセットになっているという点です。
例えば、ただゲームをして「楽しかったね!」で終わるのではなく、「あの時、〇〇さんが声をかけてくれて安心した」「意見がまとまらなくて少しイライラしたけれど、最後は協力できた」といった、内面で起きた感情の動きを見つめ直す時間が用意されています。
学校という環境では、負担の少ない短いエクササイズを活用することが推奨されることが多いようです。
教師は単なるゲームの進行役ではなく、生徒たちの気づきを促すファシリテーターとしての役割が求められます。
自己理解と他者理解を深めるねらい

中学校でこうした活動を取り入れる最大のねらいは、自己理解と他者理解を促進することです。
思春期の生徒たちは、他人の目を気にしやすく、自分を表現することに強い抵抗を感じる時期でもあります。
「周りからどう見られているか」「浮いてしまわないか」と常にアンテナを張り巡らせており、教室の中では無難なキャラクターを演じている子も少なくありません。
ゲームという非日常の体験を通すことで、普段の授業では見られない友達の意外な一面に気づいたり、「自分もこんなふうに感じていいんだ」という自己受容につながったりします。
例えば、リーダーシップがあると思っていた子が実は慎重派だったり、いつも大人しい子がゲームの中ではユニークな発想を見せたりと、既存のイメージが心地よく崩れる瞬間が多々あります。
自己開示がもたらす安心感
お互いの違いを認め合う経験が、クラス内の信頼感を少しずつ育てていくきっかけになります。
「ジョハリの窓」という心理学の概念がありますが、自分が知っている自分と、他人が知っている自分を少しずつすり合わせていくことで、人間関係の風通しは劇的に良くなります。
ただし、自己理解や他者理解は一朝一夕に進むものではありません。
最初は「好きな食べ物」などの浅い自己開示からスタートし、少しずつ「大切にしている価値観」や「最近ちょっと悩んでいること」など、段階を踏んで深めていくことが大切です。
無理に本音を引き出そうとするのではなく、「違いがあって当たり前」「色々な考え方があって面白い」という土壌を、ゲームを通して耕していく感覚ですね。
こうした積み重ねが、いずれクラスでの話し合い活動や、学級目標づくりの場面で役立つファシリテーションにもつながる大きな基盤となっていきます。
学級活動でのアイスブレイクの効果
学級活動やホームルームの時間にアイスブレイクとして短いゲームを取り入れることは、教室の空気を和らげるのに非常に効果的です。
特に新年度の初めや、大きな行事の後などは、生徒も緊張でガチガチになっていたり、逆に落ち着きがなかったりしますよね。
緊張状態が続くと、生徒は防衛本能から心を閉ざしがちになり、新しい人間関係を築くエネルギーが湧いてきません。
例えば、体を少し動かしたり、言葉を使わずにコミュニケーションをとったりする活動は、心理的なハードルを下げてくれます。
「間違えても大丈夫」「笑い合ってもいい」という雰囲気が教室に生まれると、その後の学級のルール作りや話し合い活動も、ぐっとスムーズに進むように感じます。
人間の脳は、体が緊張していると心も緊張するようにできています。
立ち上がって背伸びをしたり、少し歩き回って誰かとハイタッチの真似事をしたりするだけで、脳に酸素が行き渡り、リラックスホルモンが分泌されて、表情が目に見えて柔らかくなります。
また、アイスブレイクには「失敗を共有する」という素晴らしい効果もあります。
ゲームの中でちょっとしたミスをしたり、勘違いをして笑い合ったりする経験は、「このクラスでは失敗しても責められないんだ」という安心感を育みます。
普段の授業ではどうしても正解が求められますが、エンカウンターのゲームには正解がありません。
この「正解のない時間を共有する」ことこそが、生徒たちの凝り固まった人間関係の緊張を解きほぐし、よりフラットで柔らかな関係性へと再構築する最高の潤滑油になるかなと思います。
参加の自由と非審判のルールの重要性

グループエンカウンターを成功させるための大前提として、絶対に欠かせないのが安全な場の確保です。
そのためには、実施前に明確なルールを生徒に伝える必要があります。
「みんなで楽しくやりましょう」といった曖昧な呼びかけではなく、何がOKで何がNGなのかを、はっきりと明文化しておくことが重要です。
特に重要なのが以下の3つのルールです。
- 参加・不参加の自由:無理に参加しなくてよい、見学でもOKとする。
- 非審判的な態度:人の意見を否定したり、からかったりしない。
- 守秘の原則:ここで聞いた個人的な話を、他の場所で言いふらさない。
「みんな仲良くしなければならない」という同調圧力は、かえって生徒を苦しめることがあります。
「話したくない時はパスしていいよ」と最初に伝えておくことで、生徒は安心して場に身を置くことができるんですね。
特に中学生は、他者からの評価に非常に敏感です。
「こんなことを言ったらバカにされるのではないか」という不安を取り除くために、教師自身が非審判的な態度(良い・悪いで評価しない態度)のモデルを示す必要があります。
参加の自由を保障する具体的な方法としては、ゲームの輪の少し外側に「見学席」や「観察者(オブザーバー)席」を設けるのも一つの手です。
「今は参加する気分じゃないな」という生徒は、外側からみんなの様子を観察し、後で「外から見ていてどうだった?」と感想を求めることで、立派に活動に参加していることになります。
また、守秘の原則については、「ここでの話は他言無用」と堅苦しく言うよりも、「誰かが勇気を出して話してくれた個人的なことは、他のクラスの友達やSNSで絶対に言わないようにしようね。それは思いやりだよ」と、中学生に響く言葉で具体的に伝えることが、トラブルを防ぐ要になります。
シェアリングで振り返りを行う手順

ゲームが終わった後のシェアリング(振り返り)こそが、この活動の肝と言っても過言ではありません。
ただ「楽しかった」で終わらせず、体験を言葉にして意味づける時間を作ります。
いくらゲームが盛り上がっても、このシェアリングが雑になってしまうと、単なるお楽しみの時間に格下げされてしまいます。
手順としては、まず数分間、ワークシートなどに個人の気づきを書く時間を取ると良いでしょう。
人間はいきなり「どうだった?」と聞かれても、自分の感情をすぐに言葉にできるわけではありません。
一度自分自身と向き合い、文字に書き起こすクールダウンの時間を挟むことで、気づきの質が深まります。
ワークシートの問いかけは、「①今日やった事実」「②その時どう感じたか」「③この経験を日常にどう活かすか」といったステップに分けると、生徒も書きやすくなります。
共有する時の工夫と配慮
その後、少人数のグループで「私はこう感じたよ」と軽く話し合います。
ここでも、発表を強制しないことが大切です。
「書いたことをそのまま読んでもいいし、話したくないことはパスしてもいいよ」と伝えておきます。
他の人が話している時は、ただ黙ってうなずきながら聴く(傾聴する)ルールを徹底します。
最後に、教師が全体に向けて、今日の活動がこれからの学校生活にどうつながるかを短くまとめて締めくくります。
この時、一部の生徒を指名して全体の前で発表させる発表会にするのはお勧めしません。
全体発表は評価の場になりやすく、せっかくの安心感が台無しになるリスクがあるからです。
教師は、「みんなのワークシートを歩きながら見させてもらったけれど、『協力できたのが嬉しかった』『声をかけられて安心した』という素敵な気づきがたくさんありました」と、全体を包み込むようにフィードバックし、活動の価値を価値づけて終わるのが理想的な流れかなと思います。
中学校のグループエンカウンターの実践ゲーム
ここからは、中学校の教室で実際に使いやすいゲームの例や、進行上のテクニックについてご紹介します。
クラスの実態に合わせてアレンジしてみてくださいね。
新学期の自己開示に最適なペアワーク

クラス替え直後で関係性が薄い時期は、浅い自己開示から始めるのが鉄則です。
いきなり深い悩みを打ち明けるような重いテーマは避けましょう。
まだお互いのキャラクターも分かっていない状態で、「自分の長所と短所」や「将来の夢」などを語らせるのは、心理的な負担が大きすぎます。
| ゲーム例 | やり方の概要とポイント |
|---|---|
| 他己紹介 | ペアになり、数分間お互いに簡単なインタビュー(好きな食べ物、休日の過ごし方など)をして、相手のことをグループやクラスに紹介し合います。「良いところ」や「ポジティブな情報」に焦点を当てるのがコツです。 |
| 二択ライン | 「犬派?猫派?」「朝型?夜型?」「タイムマシンで行くなら過去?未来?」など軽いテーマで教室の左右に分かれます。移動するだけで意思表示ができ、発言のハードルが低いのが特徴です。分かれた後に近くの人と「なぜそっちを選んだか」を1分程度で話し合わせます。 |
| 共通点探し | 3〜4人のグループになり、制限時間内(3分など)にグループ全員の共通点をできるだけ多く見つけ出します。「全員中学生」といった当たり前のことではなく、「実は目玉焼きには醤油をかける」など、ちょっとした日常の癖などを見つけられると盛り上がります。 |
まずはペアや少人数で共通点を探すような活動から入ると、自然な会話が生まれやすいかなと思います。
共通点が見つかると、人間は無意識のうちに相手に対する警戒心を解き、親近感を抱くようになります。
他己紹介を取り入れる場合は、紹介された側が恥ずかしい思いをしないよう、「紹介する時は、相手が喜ぶような温かい言葉を使おうね」と事前に釘を刺しておくことが重要です。
また、二択ラインを行う際は、必ずしも綺麗に人数が半分に分かれるとは限りません。
極端に少数派になってしまった生徒が居心地の悪さを感じないよう、教師が「お、少数派でレアだね!こだわりが聞けそう!」とポジティブに声かけをフォローする配慮が求められます。
このように、浅く安全なやり取りの反復が、その後のより深い人間関係構築の土台となっていきます。
短時間でできるウォーミングアップ

授業の最初の5分〜10分でサッとできるウォーミングアップも知っておくと便利です。
毎回のホームルームで大掛かりなゲームを準備するのは、教師にとっても負担が大きいですし、生徒も飽きてしまいます。
ちょっとしたスキマ時間を活用して、「少しだけ心をほぐす」習慣をつけることが大切です。
おすすめの短時間ゲーム
例えば「バースデーチェーン(指と指のリング)」は定番ですね。
一切声を出さずに、身振り手振りだけで誕生日の順番(1月1日〜12月31日まで)に並ぶゲームです。
非言語でのコミュニケーションは、普段よく話す生徒も大人しい生徒もフラットな関係で協力できる良さがあります。
言葉によるコミュニケーションが得意な「いつも場を仕切る子」が必ずしもリーダーシップをとれるとは限らず、意外な生徒が身振りで的確な指示を出したりする姿が見られるのが、このゲームの面白いところです。
また、体を少し動かすことで緊張がほぐれ、その後の活動にスッと入りやすくなります。
終わった後に答え合わせとして順番に誕生日を言っていくのですが、並び間違えていた箇所があったとしても、絶対に責めず「惜しかったね!でも身振りだけでここまで並べたのはすごいよ」とプロセスを承認するようにします。
もし、自分の誕生日を知られたくないという生徒がいる場合は、「じゃあ、好きな数字の順番でもいいよ」など、臨機応変にルールを緩める柔軟さも持ち合わせておきたいですね。
こうした短時間のウォーミングアップの引き出しをいくつか持っておくと、学級の空気が少し重たいなと感じた時に、サッと処方箋のように使えるので非常におすすめです。
盛り上がらない時のファシリテーション

実際にやってみると、「誰も話さない」「一部の生徒だけがはしゃいで終わる」といった失敗はよくあることです。
私自身も冷や汗をかいた経験が何度もあります。
教師が綿密に準備をしたゲームほど、生徒の反応が薄かった時のショックは大きいものですが、そこで焦ってはいけません。
もし場がしらけてしまったら、教師が焦って無理に発言を引き出そうとするのは逆効果です。
まずは「沈黙でもいいよ」という受容的な態度を示しましょう。
中学生は、考えている最中だから黙っているのか、単に面倒くさいから黙っているのか、見分けがつかないことがよくあります。
そんな時は、「今、頭の中で言葉を探している時間だね。ゆっくりで大丈夫だよ」と待つ姿勢を見せることが、何よりも生徒に安心感を与えます。
教師の焦りは生徒に伝染する
「ほら、何か意見ないの?」「〇〇班、全然話し合ってないじゃない!」と叱責モードに入ってしまうと、エンカウンターの前提である非審判的な態度が根底から崩れてしまいます。
また、逆に一部の生徒だけが盛り上がりすぎたり、ふざけて特定の誰かをからかうような空気が生じそうになった時は、毅然とした態度で介入し、早めに「非審判のルール」や「守秘のルール」を再確認することが大切です。
「盛り上がるのは良いことだけど、誰かが嫌な思いをする言葉は使わない約束だったよね」と、ゲームを一時中断してでもクールダウンを図ります。
うまくいかなかった回は、その事実をそのまま受け止め、「今日は少し難しかったかもしれないね」と共有してしまって構いません。
次回は少し難易度を下げて、発言の必要がない書く作業を多めにするなど、生徒の実態(レディネス)に合わせた微調整を重ねていくことが、ファシリテーターとしての腕の見せ所かなと思います。
いじめ未然防止と学級集団づくり

グループエンカウンターは、学級の雰囲気を温かくし、いじめの未然防止にも役立つと言われています。
お互いの背景や価値観を知ることで、自分とは異なる相手に対する異質排除の心理が働きにくくなり、安易な排斥や偏見が生まれにくくなるからです。
文部科学省の『生徒指導提要』などにおいても、児童生徒の人間関係形成や、自己指導能力の育成に向けた予防的なアプローチの重要性が度々指摘されています。
ただし、過度な競争要素を入れたり、連帯責任を負わせたりするような設計は、逆に特定の生徒を追い詰め、同調圧力を生む危険性があります。
例えば、スピードを競うゲームで、運動が苦手な生徒や理解が少しゆっくりな生徒が「足を引っ張った」と責められるような場面が生まれてしまっては、本末転倒です。
エンカウンターのゲームを選ぶ際は、他者と競うものではなく、「全員でミッションをクリアする」「お互いに協力しないと解決できない」といった、協力型の課題(コーペラティブ・ゲーム)を意識して取り入れることが重要です。
常に「勝敗よりも気づき」を重視し、どんな生徒でも安全に参加できる環境づくりを心がけたいですね。
いじめの問題は非常に根深く、ゲームを数回やっただけで全てが解決するほど単純なものではありません。
しかし、「このクラスでは、自分の居場所がある」「困った時は誰かに助けを求めてもいいんだ」という実感を持たせることが、結果的にいじめが起きにくい、あるいは起きたとしても深刻化する前に自浄作用が働く学級集団を作ることにつながっていくと信じています。
中学校のグループエンカウンターのゲーム総括

中学校におけるグループエンカウンターのゲームは、単なる暇つぶしや時間潰しのレクリエーションではなく、意図的に仕組まれた生徒たちの成長の場であり、人間関係のスキルを育む大切な教育活動です。
大切なのは、目の前の生徒たちの状態(レディネス)をしっかり見極め、無理のない範囲でスモールステップを踏んでいくことです。
最初から深い自己開示を求めたり、全員が熱心に参加することを期待しすぎたりすると、教師も生徒も疲弊してしまいます。
1回で完璧に仲良くなることを目指すのではなく、年間計画の中に無理なく組み込み、年間を通じて少しずつ関係性を深めていく視点を持つと良いかもしれません。
年度当初は浅い交流から始め、行事の前後で協力をテーマにしたものを取り入れ、学年末には1年間の成長を認め合うような構成にするなど、長期的なスパンで捉えることが成功の秘訣です。
ゲームの楽しさと振り返りの深さを両立させることで、生徒たちは自分自身と他者を尊重する態度を少しずつ身につけていきます。
ぜひ、先生方ご自身もリラックスして、生徒と一緒に楽しみながら取り組んでみてください。
