生徒会長の演説を成功させるためには、演説の例文をただ読むだけでは足りません。
面白い“つかみ”で注目を集め、わかりやすい構成で中学生にも伝わる内容にまとめ、さらに高校生が求める論理性や実現性を押さえることが必要です。
その上で、公約を絞り、副会長としての経験をどう活かすかを示し、最後は強い意志を込めた締めの言葉で印象を残すことが、当選につながる演説の本質です。
この記事では、3分以内で伝わる構成、キャッチフレーズの作り方、面白い演出のコツ、例文の応用など、実際のスピーチで即使えるポイントをまとめています。
- 生徒会長 演説 例文を魅力的にする「つかみ」や面白い展開の作り方
- 中学生・高校生それぞれに刺さる演説のコツと3分でまとまる構成
- 副会長経験を生かした立候補理由や公約の伝え方、キャッチフレーズ活用術
- 聴衆の心を動かす締めの言葉と、実践で使える例文のポイント
生徒会長の演説例文の基本構成と必勝術

生徒会長の演説を「伝わるスピーチ」にするためには、ただ例文を読むだけでは不十分です。
聴衆を引きつける工夫、年齢に合わせた伝え方、限られた時間で要点をまとめる技術など、押さえるべきポイントがいくつも存在します。
ここからは、生徒会長をめざす人が必ず知っておきたい5つの視点について、順番にわかりやすく解説していきます。
「演説をどう面白くする?」「中学生と高校生では何が違う?」「3分でどうまとめる?」といった疑問に応えながら、あなたの演説が一段階レベルアップするヒントを紹介します。
面白い要素を取り入れる演説の工夫
生徒会長の演説において「面白さ」を取り入れることは、単なるウケ狙いではなく、聴衆との信頼関係を築くための高度な戦略です。
中学校や高校の全校集会や立会演説会は、生徒にとって「堅苦しくて退屈な時間」になりがちですよね。何人もの候補者が似たようなマジメな話をし続けると、どうしても聞く側の集中力は切れてしまいます。そこで効果を発揮するのが、適度な「ユーモア」や「面白さ」なんです。
心理学的にも、笑いやユーモアは「緊張の緩和」をもたらし、相手に対する警戒心を解く効果があると言われています。
演説の冒頭や合間にクスッと笑える要素を入れることで、「この人は自分たちと同じ感覚を持っている」「親しみやすいリーダーになりそうだ」というポジティブな印象を与えることができるんですね。完璧すぎる優等生よりも、少し人間味のあるリーダーの方が、今の時代は支持されやすいかもしれません。
では、具体的にどのような工夫ができるでしょうか。私がおすすめするのは以下の3つのアプローチです。
| 手法 | 具体例と効果 |
|---|---|
| 自虐ネタ(失敗談) | 「実は私、去年の球技大会でオウンゴールを決めたあの○○です」
→ 自分の弱みをさらけ出すことで、親近感と「応援したい」気持ちを引き出します。 |
| あるあるネタ(共感) | 「5時間目の授業、眠いですよね?私も船を漕がないように必死です」
→ 全員が共有している悩みに触れることで、「私たちのことを分かっている」と思わせます。 |
| 予想外の展開(ギャップ) | 「私の趣味は筋トレです。この筋肉で学校の課題も持ち上げます(ポーズ)」
→ マジメな演説の中に視覚的なインパクトを入れることで、眠気覚まし効果を狙います。 |
ただし、面白さを取り入れる際には「品位」を保つことが絶対条件です。誰かを傷つけるイジりや、先生や学校への過度な批判、下品な言葉遣いは、笑いを取れたとしても「生徒会長としての資質」を疑われてしまいます。
あくまで「誠実な演説の中に、スパイスとしてユーモアを入れる」というバランス感覚が大切ですね。「あいつの演説、面白かったけど内容はしっかりしてたよね」と言われるのが理想のゴールかなと思います。
また、緊張して噛んでしまった時にこそ、ユーモアのチャンスがあります。焦ってパニックになるのではなく、「おっと、大事なところなので噛んでしまいました。もう一度言わせてください!」と笑顔で言い直せば、そのピンチ自体が会場の空気を和ませる笑いに変わります。
面白さとは、台本にあるジョークだけでなく、こうした当日の余裕や機転から生まれるものかもしれませんね。
生徒会長の演説のコツと押さえるべき4要素
生徒会長の演説を成功させるためには、闇雲に思いを語るのではなく、聴衆が情報を処理しやすい「型」に沿って話すことが重要です。
その基本となるのが「立候補理由・公約・つかみ・締め」の4要素です。これらがバランスよく配置されていると、聴衆は脳内で情報を整理しやすく、あなたのメッセージがスムーズに心に届くようになります。
まず1つ目の「立候補理由」は、演説の土台となる部分です。
ここでは「なぜやるのか」という原動力を伝えますが、単に「学校を良くしたい」という抽象的な言葉だけでは不十分です。「部活の予算折衝で悔しい思いをした」「先輩の背中を見て憧れた」といった、あなただけの具体的なエピソード(原体験)を盛り込むことで、言葉に重みと説得力が生まれます。
人は論理よりもストーリーに共感する生き物なので、ここを丁寧に語ることで「応援する理由」を作ってあげることができます。
2つ目の「公約」は、未来への約束です。
ここで大切なのは「選択と集中」ですね。あれもこれもと詰め込みすぎると、結局何がしたいのか印象に残りません。公約は1つか2つに絞り、その代わり実現プロセスを具体的に示しましょう。「目安箱を設置します」だけでなく、「毎週金曜に生徒会で開封し、翌週のランチ放送で回答します」まで言えば、本気度が伝わりますよね。実現可能性(Feasibility)を感じさせることが、信頼獲得の鍵になります。
3つ目の「つかみ」は、冒頭の勝負所です。
演説の最初の15秒で「この人の話は聞く価値がある」と思わせなければ、その後どんなに良いことを言っても届きません。「みなさん、今の学校生活に100点満点をつけられますか?」といった問いかけや、小道具を使った演出など、聴衆の顔を上げさせる工夫が必要です。ここは少し演劇的な要素を取り入れても良いパートかなと思います。
そして4つ目の「締め」は、行動を促すラストスパートです。
心理学の「親近効果(Recency Effect)」により、最後に聞いた言葉が最も記憶に残ると言われています。ここで「ご清聴ありがとうございました」と事務的に終わるのではなく、「私と一緒に新しい学校を作りましょう!」「投票用紙の1番上に、○○の名前を書いてください!」と、熱意を込めて強く背中を押す言葉を選ぶべきです。
この4要素をパズルのように組み合わせることで、最強の演説構成が完成します。
中学生でも使える分かりやすい構成法

中学生の生徒会演説では、「わかりやすさ」が何よりも優先されるべき正義です。
同級生はもちろん、入学したばかりの1年生から受験を控えた3年生まで、全校生徒に内容を理解してもらう必要があるからです。
難しい熟語や複雑な構文を使う必要はありません。むしろ、誰が聞いても映像が浮かぶようなシンプルな言葉選びが、当選への近道になります。
構成の基本としておすすめしたいのが、ビジネスプレゼンでも使われる「PREP法」を中学生向けにアレンジした形です。
【中学生向け演説構成の黄金パターン】
- Point(結論):「私は○○な学校にしたいです!」と最初に宣言する。
- Reason(理由):「なぜなら、今の学校には○○という問題があるからです」と現状を話す。
- Example(具体例):「たとえば、朝の挨拶が少なくて寂しいと感じたことはありませんか?」と身近な例を出す。
- Point(再度結論):「だから私は○○に取り組みます。応援お願いします!」と最後にまとめる。
この流れに沿うだけで、話があちこちに飛ばず、筋の通った演説になります。特に「Example(具体例)」の部分では、中学生の日常に密着した話題を選ぶのがコツですね。
「学校の活性化」と言うよりも「挨拶であふれる明るい廊下」、「環境美化」と言うよりも「ゴミの落ちていないピカピカのトイレ」と言い換えた方が、聞き手は「それならいいかも!」と直感的にイメージできます。
また、中学生の演説では、視覚や聴覚に訴えるテクニックも有効です。たとえば、大事なキーワードを言う前に一瞬「間」を空けたり、「明るい学校、楽しい行事、みんなの生徒会」のようにリズムの良いフレーズを繰り返したりすると、耳に残りやすくなります。
抑揚のない一本調子で話すと、どうしてもお経のように聞こえて眠くなってしまうので、友達に話しかけるようなトーンで、少し大きめのジェスチャーを交えながら話すと良いでしょう。
さらに、1年生にもわかるように、専門用語(「評議会」「監査」など)を使う場合は簡単な説明を加える優しさも大切です。「生徒会とクラスをつなぐ評議会、つまりクラスの代表会議をもっと活発にします」といった補足があるだけで、「この人はみんなのことを考えてくれている」という安心感につながります。
難しく話すのがリーダーではなく、難しそうなことをわかりやすく伝えるのが真のリーダーなのかもしれませんね。
高校生が意識したい論理的な訴え方
高校生の生徒会長選挙となると、求められるレベルはグッと上がります。単なる人気投票ではなく、「この学校の課題をどう解決してくれるのか」という手腕が見定められる場になるからです。
先生方や意識の高い生徒たちを納得させるためには、感情論だけでなく、データやロジックに基づいた「論理的な訴え」が必要不可欠になります。
論理的な演説を作るためには、「課題解決のプロセス」を可視化することが重要です。まず現状分析として、学校が抱えている問題点を客観的に指摘します。
ここで感覚値で話すのではなく、「全校アンケートの結果、約8割の生徒が○○に不満を持っていることがわかりました」のように数字を引用できると、説得力が段違いに増しますね。数字は嘘をつかない共通言語なので、聞き手の納得感を醸成するのに最強のツールです。
そして、その課題に対する解決策を提示する際も、根拠(エビデンス)を示すことが大切です。
ここで役立つ視点の一つとして、日本の高校生特有の心理傾向に触れるのも高度なテクニックです。たとえば、公的機関の調査データを引用して、演説に深みを持たせる戦略があります。
【権威性データの活用例】
国立青少年教育振興機構の調査によると、日本の高校生は米国や中国などに比べ、「自分は人並みの能力がある」と肯定的に捉える割合が低い傾向にあります。
(出典:国立青少年教育振興機構『高校生の科学への意識と学習に関する調査報告書』等を参照)
このデータを踏まえ、「多くの人が自信を持てずにいる現状があるからこそ、一人のカリスマリーダーではなく、みんなの小さな意見を吸い上げる『支え合い型の生徒会』が必要なんです」と主張すれば、聴衆の共感を呼びつつ、論理的な裏付けのある強力なメッセージになります。
さらに、高校生ならではの「実現可能性」への配慮も忘れてはいけません。「食堂のメニューを全部無料にします!」といった夢物語は、逆に「生徒会の予算を理解していない」と判断され、マイナス評価になりかねません。
「予算の範囲内でメニューの見直しを業者と交渉します」「生徒への試験導入期間を設けます」など、大人の社会でも通じるような現実的なプロセス(PDCAサイクル)を盛り込むことで、「この人なら実務を任せられる」という信頼を勝ち取ることができます。
論理的であるということは、冷たいということではありません。熱い情熱(パトス)を、冷静な論理(ロゴス)で支えることによって、初めて人の心を動かし、かつ行動(投票)させる演説が完成します。
高校生の演説は、まさに大人のプレゼンテーションへの第一歩と言えるかもしれませんね。
3分で伝わる演説を作る時間配分
演説において「3分」という時間は、長くもあり、短くもある絶妙な尺です。準備不足だと余ってしまい気まずい沈黙が流れますし、詰め込みすぎると早口になって何も伝わりません。
3分間(180秒)を最大限に活かすためには、綿密なタイムマネジメントが勝敗を分けます。
一般的に、人が聞き取りやすい話すスピードは「1分間に300文字程度」と言われています。つまり、3分間の演説なら「約900文字」の原稿を用意するのがベストです。
一方で、演説時間が1分程度に限られている場合は、生徒会選挙の演説で1分で相手の心を掴むコツと中学生・高校生別例文のような短時間スピーチ向けのコツも押さえておくと安心です。
これを基準にして、各パートの秒数配分をあらかじめ設計しておきましょう。
| パート | 時間配分 | 文字数目安 | 役割とポイント |
|---|---|---|---|
| ①導入(つかみ) | 30秒 | 約150文字 | 挨拶、自己紹介、キャッチフレーズ。第一印象を決定づける。 |
| ②立候補理由 | 45秒 | 約225文字 | 原体験と動機。なぜ自分がやるのかを熱く語る。 |
| ③公約・具体策 | 75秒 | 約375文字 | メインパート。何をどう変えるか、論理的に説明する。 |
| ④結び(締め) | 30秒 | 約150文字 | 未来の提示と投票のお願い。感情に訴えかける。 |
この配分表(タイムテーブル)を目安に原稿を作成し、必ずストップウォッチを使って実際に声に出して練習してください。
黙読で3分でも、感情を込めて話すと3分半かかってしまうことはよくあります。特に本番は緊張で早口になりがちなので、練習段階では「2分50秒」くらいで終わるように調整しておくと、当日の「間」を取る余裕が生まれます。
また、万が一トラブルが起きた時の対応も考えておくと安心です。
もし時間が余ってしまったら、「最後にもう一度だけ言わせてください」とキャッチフレーズを繰り返せば、印象を強めることができます。逆に時間が足りなくなりそうなら、細かい具体例をカットして、結論だけを言い切る勇気も必要です。「えー、あー」と言葉に詰まる時間を減らすだけでも、数秒の節約になります。
3分間という枠組みの中で、いかに無駄を削ぎ落とし、伝えたい核(コア)を残せるか。この「編集力」こそが、聴衆の心に刺さる演説を生み出します。
時間は誰にでも平等ですが、その使い方はあなた次第で最大の武器になるのです。
生徒会長の演説の例文から学ぶ実践テクニック

生徒会長の演説は、最初の一言から最後の締めまで、すべての流れが票につながる大切な要素です。
特に、聞き手の心をつかむ“入り方”、自分を印象づける“理由の伝え方”、そして“覚えてもらえる言葉選び”は、演説の完成度を大きく左右します。
ここからは、より実践的なテクニックとして、演説の冒頭から終盤までの各パートで意識すべきポイントを順番に紹介します。
「どう始めれば良い?」「副会長経験をどう活かす?」「キャッチフレーズは必要?」「公約の伝え方は?」「最後はどう締める?」といった具体的な疑問を解消しながら、聞いた生徒が“この人に任せたい”と思える演説づくりをサポートします。
つかみで注目を集める効果的な入り方
演説の成否は、マイクの前に立った瞬間からの「最初の30秒」で決まると言っても過言ではありません。この導入部分、いわゆる「つかみ」で滑ってしまうと、聴衆はスマホをいじり始めたり、隣の子と話し始めたりして、あなたの声はBGMになってしまいます。
逆にここでグッと引き込むことができれば、その後の公約が多少難しくても、しっかりと聞いてもらえる態勢を作ることができます。
効果的なつかみのテクニックとして、私が推奨するのは「問いかけ」「共感」「意外性」の3段活用です。これらを組み合わせることで、聴衆の脳に強烈なフックをかけることができます。
まず「問いかけ」は、聴衆を当事者にする最強の方法です。
「みなさん、こんにちは」と普通に始めるのではなく、「みなさん、今の学校生活、100点満点で何点ですか?」と問いかけてみてください。答えを求めなくても、聞かれた瞬間に生徒たちは頭の中で点数を考え始めます。これで意識がステージ上のあなたに向きます。
次に「共感」です。問いかけの直後に、「私は正直、70点だと思います。なぜなら…」と、生徒たちが日頃感じている不満やモヤモヤ(校則が厳しい、行事がマンネリなど)を代弁します。
「そうそう、それが言いたかった!」と思わせることで、あなたは「私たちの代表」としての資格を得ることができます。共感は信頼への最短ルートなんですね。
そして「意外性」でトドメを刺します。
「私はこんな見た目ですが、実は家では甘えん坊です(笑)」のようなギャップや、「実は私、1年生の時は学校を辞めようと思っていました」といった衝撃的な告白など、予想を裏切る展開を用意します。これにより、「この人の話は普通じゃないぞ」「もっと聞きたい」という興味を喚起します。
具体的なフレーズ例をいくつか挙げてみましょう。
- 「ただのマジメなメガネキャラだと思っていませんか?実はメガネを外すと…何も見えません。でも、学校の未来は誰よりもハッキリ見えています!」(ユーモア+意志)
- 「先生方には怒られるかもしれませんが、あえて言います。今のこの学校の空気、変えませんか?」(反骨精神+共感)
- 「3分間だけ、スマホを置いて私を見てください。あなたの高校生活を最高にする方法を教えます。」(メリット提示)
このように、つかみとは単なる挨拶の時間ではなく、聴衆の心を開くための「鍵」です。恥ずかしがらずに、少しオーバーなくらいのパフォーマンスで、会場の空気をあなたの色に染め上げてくださいね。
副会長経験を活かす立候補理由の示し方
もしあなたが副会長や生徒会役員の経験者なら、それは選挙戦において圧倒的なアドバンテージになります。
生徒会副会長としての演説構成や役割別の例文をより詳しく知りたい場合は、生徒会副会長の演説の例文|中学生・高校生向けの勝てるコツと書き方もあわせて確認しておくと安心です。
しかし、ただ「副会長をやっていました」と言うだけではもったいない。「経験があるから偉い」のではなく、「経験があるからこそ見えた課題があり、それを解決できるのは自分しかいない」という文脈で語ることが重要です。
副会長というポジションは、会長を支える「No.2」であり、実務の要(かなめ)です。華やかな舞台の裏側で、地味な調整作業や先生との交渉、資料作成などに奔走してきたはずです。その「泥臭い経験」こそが、あなたの最大の武器になります。演説では、その経験から得た「気づき」を立候補理由の核に据えましょう。
たとえば、「私は1年間、副会長として行事の裏方を務めました。そこで気づいたのは、素晴らしい企画があっても、予算不足で諦めている生徒が多いという現実です。だから私は会長になって、予算配分の仕組みそのものを変えたいと思い、立候補しました」という流れです。
これなら、「ただ役職が欲しいだけの人」ではなく、「現場を知り尽くした改革者」として映りますよね。
また、前会長との違い(差別化)を示すのも効果的です。「前会長のカリスマ性は私にはありません。しかし、副会長としてみんなの意見を聞き、形にしてきた『実務力』なら誰にも負けません」と宣言することで、あなたの独自のリーダー像を確立できます。これは「継続性」と「進化」の両方をアピールできる高等テクニックです。
さらに、具体的なエピソードを交えることで、聴衆の感情を揺さぶることができます。
【副会長経験を活かすフレーズ例】
「文化祭の準備で遅くまで残っていた時、あるクラスの委員が『どうせ言っても変わらないよ』と呟いたのを聞きました。副会長だった私は、その時何も言い返せませんでした。その悔しさが、私の原動力です。もう二度と、そんな言葉は言わせません。みんなの声が確実に届く生徒会を、私が作ります。」
このように、副会長経験を単なる肩書き(スペック)としてではなく、あなたの情熱の源泉(ストーリー)として語ってください。
「この人は口だけじゃなく、本当に動いてくれそうだ」という信頼感は、確かな経験に裏打ちされた言葉からしか生まれません。
キャッチフレーズで印象に残す方法

キャッチフレーズは、選挙戦における「あなたの名刺」であり、もっと言えば「ブランドロゴ」のような存在です。
数百人の生徒が何人もの演説を続けて聞いた後、残念ながら細かい公約の内容はほとんど忘れ去られてしまいます。しかし、耳に残る「たった一言」のキャッチフレーズがあれば、投票用紙に名前を書くその瞬間に、あなたの顔を思い出してもらうことができるのです。
優れたキャッチフレーズには共通点があります。それは「短く(Short)」「単純で(Simple)」「刺さる(Specific)」の3S要素です。ダラダラと長い文章はスローガンとは呼べません。廊下ですれ違いざまに言っても伝わるくらいの短さ、目安としては「15文字以内」が理想的です。
中学生向けの具体的なフレーズ例やNG表現をさらに確認したい人は、生徒会選挙のキャッチコピーの中学生編|心掴む短い言葉とNG集も参考にしてみてください。
人間が短期記憶で保持できる情報の数は限られているため、短ければ短いほど記憶への定着率は高まります。
では、具体的にどう作ればいいのか。効果的なのは「レトリック(修辞技法)」を使うことです。韻を踏んだり、対比を使ったりすることで、言葉にリズムと力が宿ります。
| テクニック | 作成のポイント | 具体例 |
|---|---|---|
| 対句・コントラスト | 反対の意味を持つ言葉を並べて、変化を強調する。 | 「不満を希望に、沈黙を声に。」
「地味な生徒会から、攻める生徒会へ。」 |
| 韻を踏む(リズム) | 語呂合わせやリズム感で、口ずさみたくなる言葉にする。 | 「有言実行、○○(名前)が結構!」
「変えます、やります、○○(名前)です。」 |
| 問いかけ型 | あえて未完成の文や質問にして、相手に考えさせる。 | 「このままで、いいの?」
「君の1票、無駄にしてない?」 |
| パワーワード | 強い意志を示す単語を入れて、インパクトを出す。 | 「学校革命。」
「生徒会を、ぶっ壊す(良い意味で)。」 |
また、自分の名前をキャッチフレーズに組み込むのも王道の戦術です。「○○(名前)におまかせ!」のようなベタなものでも、連呼することで単純接触効果(ザイアンスの法則)が働き、親密度が増します。
名前と公約をセットにしてインプットさせることができれば、投票行動に直結しやすくなります。
逆に避けるべきなのは、「明るい学校を目指します」「みんなのために頑張ります」といった、誰にでも言える抽象的なフレーズです。これらは「耳障りはいいけれど、何も言っていないのと同じ」です。
生徒たちの心にフックをかけるためには、「えっ?」と思わせる違和感や、「なるほど!」と思わせる具体性が必要です。
キャッチフレーズは演説の中だけで使うものではありません。ポスター、タスキ、選挙公報、そして演説の最初と最後。あらゆる場面で徹底的に繰り返してください。
Appleと言えば「Think Different」、Nikeと言えば「Just Do It」のように、あなたと言えば「この言葉」と認知されるまで使い倒すことが、勝利への鉄則です。
例文を応用した公約の伝え方
公約(マニフェスト)は、あなたが当選後に何をするかの約束手形です。ネット上にある例文をそのままコピペしても、自分の学校の実情に合っていなければ、生徒たちにはすぐに見透かされてしまいます。
「それ、うちの学校じゃ無理でしょ」と思われた瞬間、あなたの信頼度はゼロになってしまいます。例文をベースにしつつ、いかに「自分ごと」としてカスタマイズできるかが腕の見せ所です。
公約を伝える際は、「What(何をするか)」だけでなく、「How(どうやるか)」と「Benefit(生徒にどんないいことがあるか)」をセットで語るのが鉄則です。これを私は「公約の3階建て構造」と呼んでいます。
【公約の3階建て構造】
- 1階(What):「目安箱をデジタル化します」(施策)
- 2階(How):「Googleフォームを活用し、QRコードを教室に掲示。匿名で投稿できるようにします」(実現手段)
- 3階(Benefit):「これにより、誰にも知られずに悩みを相談でき、学校生活のストレスが減ります」(生徒のメリット)
多くの候補者は1階部分しか言いません。しかし、生徒が知りたいのは3階の「自分にとってどんなメリットがあるか」であり、先生や疑り深い生徒が気にしているのは2階の「実現可能性」です。例文を応用する際は、この2階と3階を自分の学校の文脈に合わせて具体的に肉付けしてください。
例えば、「校則を見直します」というよくある公約。これをそのまま言うのではなく、「スマホの使用ルールを緩和します」と具体化し、さらに「昼休み限定で試験導入し、トラブルがなければ正式採用するという段階的なプランを先生に提案します」とプロセスを提示します。
ここまで言えば、「おっ、こいつは本気だ」「無茶な要求ではなく、現実的な交渉をしてくれそうだ」という期待感が生まれます。
また、公約は「課題解決型」にすると説得力が増します。
- × 「トイレをきれいにします」→ ○ 「トイレの臭いが気になるという声を多く聞きました。そこで芳香剤の設置予算を確保し、清掃用具を一新します」
- × 「行事を盛り上げます」→ ○ 「文化祭の参加率が下がっています。原因は準備期間の短さです。準備期間を3日延長するよう交渉し、クオリティの高い出し物を可能にします」
このように、「課題(Problem)→解決策(Solution)」の順で話すと、ストーリーとして納得しやすくなります。例文はあくまで「骨組み」です。そこにあなたの学校独自の「肉(リアルな課題)」と「血(あなたの熱意)」を通わせることで、初めて生きた公約になります。
そして最後に大切なのは、「できない約束はしない」という誠実さです。「必ず実現します」と言い切るのが怖い場合は、「実現に向けて全力を尽くして交渉することを約束します」と言えばいいのです。
嘘をつかない姿勢こそが、最大の信頼につながります。
締めの言葉で心を動かす終わり方
演説の最後、「ご清聴ありがとうございました」でサラッと終わっていませんか? それは非常にもったいないことです。
心理学の「ピーク・エンドの法則」にあるように、人は「一番盛り上がった場面」と「終わりの場面」で全体の印象を判断します。つまり、締めの言葉が弱いと、それまでどんなに良い演説をしていても、「なんか普通だったな」という印象で終わってしまうのです。
最高の締めくくりにするためには、「感情(Emotion)」と「行動喚起(Call to Action)」の2つを込める必要があります。
まず「感情」です。ここでは、あなたの「覚悟」を見せます。テクニック論ではなく、本音の言葉で語りかけてください。
「生徒会長は大変な仕事です。批判されることもあるでしょう。それでも私は、この学校が好きだから、みんなの笑顔が見たいから、先頭に立つ覚悟を決めました」——このように、リスクを承知で挑む姿勢を示すと、聴衆の心に「応援したい」という火が灯ります。
次に「行動喚起」です。これはマーケティング用語でCTA(Call to Action)と呼ばれますが、具体的にどうしてほしいかを伝えます。
「私に投票してください」と言うのは恥ずかしいかもしれませんが、選挙においてはハッキリと言葉にしないと伝わりません。
ただし、単に「投票して」と頼むよりも、「一緒にやろう」と巻き込む言い方の方が効果的です。
「私一人では学校を変えられません。でも、皆さんの協力があれば、必ず変えられます。私に力を貸してください。一緒に最高の学校を作りましょう!」というメッセージは、聴衆を「傍観者」から「当事者」に変える力があります。
以下に、心を動かす締めのパターンの例をいくつか紹介します。
| パターン | 特徴 | 例文 |
|---|---|---|
| 情熱型 | 熱意を前面に出し、力強く宣言する。 | 「絶対に後悔させません。私に、あなたの大切な1票を託してください!」 |
| 未来志向型 | ワクワクする未来を見せて終わる。 | 「来年の今頃、『この学校でよかった』とみんなで笑い合える未来を約束します。」 |
| 謙虚・誠実型 | 誠実さをアピールし、静かな感動を呼ぶ。 | 「不器用かもしれませんが、誰よりも汗をかいて働きます。どうか、チャンスをください。」 |
最後の最後、マイクを置くその瞬間までが演説です。
言い終わった後、すぐにお辞儀をするのではなく、会場全体をゆっくりと見渡し、自信に満ちた表情で一呼吸置いてから深く頭を下げる。
この「余韻」を作ることで、あなたの言葉は聴衆の胸に深く刻み込まれます。終わりよければすべてよし。最高のフィナーレを演出してください。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
演説の準備をする際、チェックリストとして活用してください。
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構成の4要素:「立候補理由・公約・つかみ・締め」のバランスが最重要。
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面白さの演出:適度なユーモアや自虐ネタは、聴衆の警戒心を解き、親近感を生む。
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つかみの技術:冒頭の「問いかけ」「共感」「意外性」で、最初の30秒を制する。
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副会長経験:単なる実績ではなく、「現場を知るからこその課題意識」として語る。
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公約の具体化:「What(施策)・How(手段)・Benefit(メリット)」の3階建てで説得する。
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ターゲット別戦略:中学生は「わかりやすく明るく」、高校生は「論理的かつ現実的」に。
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時間配分:3分間(約900文字)をフル活用し、早口にならないよう練習する。
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キャッチフレーズ:短く、リズミカルで、記憶に残る「ブランドロゴ」を作る。
-
締めの言葉:覚悟を示し、聴衆を巻き込む「行動喚起(CTA)」で熱く終わる。
生徒会長の演説は、単なる儀式ではありません。あなたの「想い」を「言葉」に変え、学校というコミュニティを動かす、最初にして最大のリーダーシップの場です。
例文を参考にすることは大切ですが、そこにあなた自身の「体温」が乗っていなければ、誰の心にも届きません。「なぜ自分なのか」「学校をどう変えたいのか」を突き詰め、自分の言葉で語ってください。テクニックはあくまで、あなたの熱意を届けるための拡声器です。
緊張するのは、あなたが本気である証拠です。深呼吸をして、顔を上げ、堂々とマイクの前に立ってください。あなたの言葉が、学校の未来を変える第一歩になることを、心から応援しています。

